13-ネットワーク

頭文字D / 高橋涼介風:VLAN

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頭文字D / 高橋涼介風:VLAN

VLANとは何か?〜「論理的に峠を区切る」技術

【涼介】
啓介、VLANがどんなものか、ちゃんとイメージできてるか?

【啓介】
うーん……正直、ちょっとピンときてねぇ。
「仮想的にLANを分ける」とか言われても、オレらが普段やってる走りと違って、頭に入ってこねぇよ。

【涼介】
まぁ当然だな。
いいか、VLANってのは──1本の道路に、レーンを分けて走らせるみたいなもんだ。

【啓介】
レーンを分ける……?

【涼介】
例えば、会社に1台のスイッチがあるとする。
そこに営業部、開発部、経理部のPCが全部つながってたら、普通は同じネットワーク上で通信してる状態になる。

【啓介】
ってことは……全員が同じコースを走ってる、みたいな感じか?

【涼介】
その通りだ。
でも、もし開発部のヤツがウイルスに感染したらどうなる?

【啓介】
やべぇな。他のPCにも広がる可能性がある。

【涼介】
そう。同じコースで全車が混走してたら、クラッシュすれば巻き添えになる。
だが、VLANを導入すれば──営業部用のレーン、開発部用のレーン、経理部用のレーンを論理的に引ける

【啓介】
なるほど……じゃあ、同じスイッチでも、VLANで“見えない壁”を作ってやれば、他の部署に通信が流れないようにできるってことか。

【涼介】
その通りだ。
論理的に区切られたネットワーク(VLAN)では、ブロードキャストも通信も完全に分離される。
必要があれば、L3ルーティングで“交差点”を作ることもできるがな。

【啓介】
なんか峠の分岐っぽいな。普段はそれぞれ別のルートを走ってるけど、必要なときだけ合流するみたいな。

【涼介】
いい着眼点だ。
そしてAccessポートとTrunkポートも重要だ。
Accessポートは1つのレーン専用
Trunkポートは、複数レーンをまたぐ管理道路みたいなもんだ。

【啓介】
Trunkってのは、スイッチ同士をつなぐとこだよな?

【涼介】
そうだ。Trunkでは、VLANタグっていう“識別ラベル”をフレームに付けて通信する。
だから複数のVLANが同じ物理線を使っても、どのVLANの通信かをちゃんと区別できる

【啓介】
すげぇな……なんか、ネットワークも走りと一緒で、“ラインをどう使うか”がカギなんだな。

【涼介】
そういうことだ。
走りにおけるライン取りが、最速の鍵を握るように──
ネットワークではVLANでの分割設計が、セキュリティとパフォーマンスを左右する。

【啓介】
よし、兄貴。なんとなく見えてきたぜ、VLANのコース図が。

【涼介】
よし、じゃ、基本からVLAN間のルーティング(インターVLANルーティング)の仕組みまで叩き込むぞ。峠は一つじゃない。“繋がり方”を制御できなきゃ、全体の速さは出せないからな。

VLAN(Virtual Local Area Network)とは

VLANは、物理的には同じスイッチ(L2機器)に接続されていても、論理的に通信を分離して複数のLANのように動作させる仕組みのことをいう。これはIEEEの802.1Qという規格で標準化されているものだ。

なぜVLANが必要か?

じゃ、何故、VLANという技術が存在するのか、それは、ネットワークの混雑と無秩序を制御する事情が出来たからだ。

過去の企業ネットワークってのは、単純だった。単純であるがゆえに、設定は簡単だったが、それと引き換えに、様々なトラブルを引き起こした。

  1. 問題1:ブロードキャストの洪水
    • LANの世界では、ARPやDHCPみたいな“ブロードキャスト”が日常的に飛び交う。
    • 台数が少ないうちはいい。でも100台、200台と増えてくると、無駄な通信でネットワークが詰まってくるんだ。
  2. 問題2:セキュリティがスカスカ
    • 全端末が同じネットワークってことは、1台ウイルスに感染すれば、全PCが感染リスクに晒される。
    • 機密情報のある開発部署と、外部メールをバンバン使う営業部署が同じLANなんて、今じゃ考えられない。
  3. 問題3:柔軟性ゼロの構成
    • 例えば、開発部が2階、営業部が3階にあるとして、同じ部署に所属してても、物理的に違う場所にいると通信設定が面倒だった。場所に縛られたネットワークなんて、走るたびに地形が変わる峠と一緒で、扱いづらい。

今では、なかなか考えにくいが、これにはネットワークデバイスが今よりも高価だったことも理由としてあげられる。様々な結果としてスイッチ1台に全部つなげばOKみたいな風潮が生まれていたんだ。

だが、上にあげた問題点を踏まえると、その代償は想像以上に厄介なものとなった。たとえば、1台のスイッチに10人の従業員がつながっていたとしよう。

彼らが開発部、経理部、営業部に属していたとしても、VLANがなければ全員が同じブロードキャストドメイン上にいる。

つまり…

  • ブロードキャスト(ARP、NetBIOS、mDNSなど)は全員に届く
  • 意図しない通信が部門間を流れ、セキュリティ的に脆弱
  • ネットワークトラフィックが混在して非効率

これが、「最速」ではないのは明らかだろう。だが、VLANを導入すれば、部署ごとに通信を完全に分離できる。これは、「同じ峠を走っているように見えて、実は“それぞれ別のレーン”を走っている状態」を実現したことと同じと言える。

どうだ啓介?素晴らしいとは思わないか。

VLANのメリット

じゃ、VLANのメリットについて一気にまとめるぞ。

1. セキュリティの強化

  • VLANで分離されたネットワークは互いに直接通信できない
     (L3ルーティングがなければ、通信は遮断される)
  • 社内の部署間の通信制限、DMZ(外部公開サーバ群)の隔離などに有効。

例:開発用の機密コードを扱うPC群と、インターネットを自由に使う営業端末をVLANで物理的に分離しておけば、万一のウイルス感染リスクを減らせる。

2. パフォーマンス向上

  • VLANごとにブロードキャストドメインが分かれるため、
     ARPやDHCPリクエストなどの“騒音トラフィック”が局所化される。
  • 特に大規模LAN環境では、これがネットワーク負荷の低減に直結する。

3. 柔軟なネットワーク設計

  • 物理的な場所(例えば、フロアやビル)に関係なく、論理的にグルーピングできる。
  • 組織変更にも強く、PCの配置換え=ネットワーク再設計、という古いやり方から解放される。

VLANの基本構成

次は基本構成だ。何事も基本が大事だ。

● VLAN ID

まずはVLANの作成だ。次のようにコマンドを入力するだけでvlan10が作成される。今回はひとつだけ作成しているが、複数作って運用するのが一般的だ。そして、VLANごとに一意な番号と名前を定義することが、管理上重要となる。

  • 使用可能範囲:1〜4094
  • VLAN 1:デフォルトVLAN。全ポートが最初に属している(管理に使われやすい)
  • VLAN 1002〜1005:Ciscoが予約。通常使用しない。
Switch(config)# vlan 10
Switch(config-vlan)# name SALES

● Accessポート vs Trunkポート

— Accessポートとは何か?

スイッチのひとつひとつのポートに対して、例えば、このポートはVLAN10、こっちのポートはVLAN20などと、それぞれを専用のVLANに所属させるものだ。

これには手動で設定するものと、接続されるPCのMACアドレスをもとに動的に設定させるものがある。前者はスタティックVLAN、後者はダイナミックVLANと呼ばれる。

いずれにしても、ポート単位で接続するVLANを認識することになる。

「スイッチのポート(口)を、1つのVLAN専用に設定する」Accessポートには、次の特徴がある。

  • 1つのVLANにしか所属できない
  • 接続されているデバイス(PC、プリンタ等)はタグ付きフレームを知らない
  • VLANタグは、送信時にスイッチが除去(untag)する
Switch(config)# interface fa0/1
Switch(config-if)# switchport mode access
Switch(config-if)# switchport access vlan 10

この設定には、あるデメリットがある。成長企業ではよくあることだが、当初はスイッチ1台で足りていても、従業員やPCの増加に伴ってスイッチを追加する必要が出てくる。

その際、一般的には古いスイッチと追加したスイッチを使って同じVLANに接続することになるが、Accessポートでは双方のひとつひとつのポートを接続用として使う必要があり、その分、PCを接続できるポートが減ってしまう。

言葉だと、イメージしづらいが、8個のポートがそれぞれのスイッチにあった場合、VLANを3つ作って運用するとなると、双方のスイッチから、各VLANに所属しているそれぞれのポートを単なる接続用として利用しないといけない。結果的に、各スイッチで5つずつのポート、計10個のポートがPC用となる。

残念ながら、新しいスイッチを手に入れても、増えたのは、たった、2つのポートと同じことなんだ。どうだ、思った以上にPCを接続できないだろ。

— Trunkポートとは何か?

Trunkポートっていうのは、1本のリンクで複数のVLANを通す技術だ。Accessポートでスイッチをつなぐと無駄がでていた。Trunkポートは、そういう無駄をなくすための手段だ。
802.1Qタグを使って、1本のリンクで複数のVLANを通す。何度も言うが、1本で全部つなぐんだ。

見た目は1本。でも中身は完全に分かれてる。速くて、確実で、スマートなやり方。それが、Trunkポートだ。

Trunkポート

  • 複数のVLANにまたがる通信を行う
  • VLANタグ(802.1Q)をEthernetフレームに挿入して送信
  • 主にスイッチ間、スイッチとルーター間の接続に使う
Switch(config)# interface fa0/24
Switch(config-if)# switchport mode trunk
Switch(config-if)# switchport trunk encapsulation dot1q
Switch(config-if)# switchport trunk allowed vlan 10,20,30

この設定で、fa0/24は VLAN10/20/30のタグ付き通信を通すTrunkポートになる。

— VLANタグ(IEEE 802.1Q)とは?

VLANタグとは、イーサネットフレームに「これはVLAN〇〇番だ」と識別情報を付ける仕組みだ。802.1Q(はちまるにーてんキュー)は、その業界標準規格の名前だ。

— 通信の基本:イーサネットフレーム

通常のLAN通信は「箱(フレーム)」でデータを送る。

[宛先MAC] [送信元MAC] [タイプ] [データ] [FCS]

これに対して802.1Qタグをつけると

[宛先MAC] [送信元MAC] [TAG] [タイプ] [データ] [FCS] となる。
       
[TAG]がVLAN識別情報が入る場所だ。

— 802.1Qタグの中身は?

タグ(4バイト=32ビット)には、こんな情報が含まれている:

フィールド名内容
TPID(Tag Protocol Identifier)0x8100(「これはタグ付きだ」と示す識別子)
TCI(Tag Control Information)下の3つを含む(合計16ビット)
→ Priority(3bit)QoS(優先度)の設定用
→ CFI(1bit)Ethernetの種類(主に0)
→ VLAN ID(12bit)VLAN番号(0〜4095)

タグは通常ユーザー機器には見えないが、タグ付きフレームにはどのVLANに属しているかが明確に記録されている。VLANタグが使われる場面は、主に「Trunkポート」だ。

このタグが付加されて、フレームが送られることで、同じケーブルを通っている通信の内、それがどちらのVLANのものなのかを受け取った先が判断して正しいVLANに振り分けてくれる

AccessポートTrunkポートを一覧にするとこんな感じだ。

ポートタイプ入ってくる通信出ていく通信
Accessポートタグなしタグなし(Untagged)
Trunkポートタグ付きタグ付き(Tagged)

つまり──

  • Accessポートではタグを付けない(エンド端末が読めないから)
  • Trunkポートではタグを付けてVLAN識別する

例えるなら──

802.1Qタグは、VLANごとの“車線識別ステッカー”みたいなもんだ。

複数の車が1本の高速道路(Trunk)を走ってても、
車体に「営業車」「開発車」「経理車」ってステッカー(タグ)があれば、
料金所(スイッチ)はどの出口(VLAN)に誘導すべきか分かる

そして、ステッカーは入口で付けられ、出口で外される。

VLAN設計 = 高度なライン取り

VLAN設計では次の要素を考慮する必要がある:

  1. 誰と誰が通信する必要があるか
  2. どの通信を遮断したいか
  3. 部門ごとにネットワークセグメントを分ける必要があるか
  4. VLAN間のルーティングは必要か(あるならどの機器でやるか)
  5. トラブル時の管理性をどう確保するか

これはまさに、峠のラインを引くようなもの。

「同じ速度で突っ込んでも、進入角度とトラクション次第で差がつく。
VLAN設計も、同じ数のホストでも、構成次第で“パフォーマンスと安全性”が変わる。」

VLAN間通信 = インターVLANルーティング
(Router on a Stick)

啓介、段々とVLANについて理解が深まったんじゃないか?ここからは、異なるVLANを通信させる方法を教えるぞ。

結果から言うと、VLANはL2(データリンク層)で通信を分離する仕組み。つまりは、異なるVLAN間では、そのまま通信させることはできない。だから、異なるVLAN間の通信は、L3(ネットワーク層)でルーティングされなければならない。

Router on a Stick構成(1本のTrunkで複数のVLANを処理)

次の構成を見てみろ。このVLAN間のルーティングにTrunk接続を利用しているだろう。これには、きちんとした理由がある。

それは、ルータのポートの数だ。ルータのポートの数はスイッチほど多くない。この場合に複数のVLANをつなぐのに、いちいちポートを使っていたら無駄が出来てしまう。感覚としてはAccessポートの話に近いな。

この無駄を回避することができる機能がルーターには存在するんだ。これをサブインターフェースという。これは、ルーターの1つの物理インターフェースを、仮想的に分割する技術だ。分割した各サブインターフェースに対して、それぞれ異なるVLAN IDとIPアドレスを設定する。

啓介、お前ならわかるだろう。「何でもかんでも物理ポートを使えばいい」って考えは、素人の設計だ。

構成イメージ

[PC-A] ─ VLAN10

[Switch]──(Trunk)──[Router]

[PC-B] ─ VLAN20

設定例(Ciscoルーター)

Router(config)# interface g0/0.10
Router(config-subif)# encapsulation dot1Q 10
Router(config-subif)# ip address 192.168.10.1 255.255.255.0

Router(config)# interface g0/0.20
Router(config-subif)# encapsulation dot1Q 20
Router(config-subif)# ip address 192.168.20.1 255.255.255.0
  • 各サブインターフェースはVLANに対応した“仮想のポート”
  • ルーターが各VLANのデフォルトゲートウェイになる
  • スイッチの該当ポートはTrunkに設定されている必要がある

🔹 Router(config)# interface g0/0.10

  • 意味
    • これは 物理インターフェース g0/0 のサブインターフェース .10 を作成するコマンドだ。作成と同時にサブインターフェースのモード(config-subif)に切り替わる。
    • 「.10」は任意の番号だが、、一般的には対応する VLAN番号(ここでは VLAN 10)と合わせて命名される。
    • ざっくりと、このサブインターフェースを VLAN 10 のトラフィック専用に使うというところだな。
  • 背景知識
    • ルーターは VLAN をネイティブで理解できていない。だから、Trunkポート経由で来た VLANタグ付きのトラフィックを処理するには、サブインターフェースで分ける必要があるんだ

🔹 Router(config-subif)# encapsulation dot1Q 10

  • 意味
    • サブインターフェースで対応する VLAN を指定する。
    • dot1Q は IEEE 802.1Q という VLANタグ付けの標準規格だ。
    • 10 は VLAN 10 のタグ付きフレームを受け取る/送信することを意味している。
  • ポイント
    • この設定がないと、ルーターは「どのVLANのトラフィックか」を判断できない。

🔹 Router(config-subif)# ip address 192.168.10.1 255.255.255.0

  • 意味
    • サブインターフェース(VLAN 10用)への IPアドレス割り当てだ
    • このIPは VLAN 10 に属するネットワークのデフォルトゲートウェイとして機能する。
    • VLAN 10 に属するPCが 192.168.10.x のIPを持っている場合、デフォルトゲートウェイを 192.168.10.1 に設定すれば、このルーター経由で他のVLANと通信できるということだ。

代替手段:L3スイッチでのインターVLANルーティング

近年ではルーターよりもL3スイッチを使う構成が一般的だ。L3スイッチなら、より高速な転送が可能で、ポート単位でルーティングを行える機能を内蔵している。参考までに見ておいてくれ。

Switch(config)# interface vlan 10
Switch(config-if)# ip address 192.168.10.1 255.255.255.0

今日はここまでだ。下にITスクール情報を置いておく。俺は学習にも闘争心が必要だと考えている。まだまだ、これからだと思えるなら限界を超えた走りを見せてくれ。健闘を祈る。

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